2022年9月
百花
人は記憶でできている。
原田美枝子さんが主役の映画「百花」を日比谷の映画館で観てきた。記憶を失っていく母親と、その母と向き合うことで思い出を蘇えらせていく息子とが、親子の愛を紡ぎ出すという映画プロデューサー・脚本家の川村元気氏が2019年に発表した小説「百花」の映画化だ。
川村元気監督自身の認知症になった祖母との原体験をもとに、母と息子二人で生きてきた親子の愛と記憶と、忘れられない事件をめぐる物語だ。
観終わったあと、なんだかスッキリしない。ワンシーンワンカットの映画なのかもしれないが、物語の流れについていけない。もやもや感が消えないので大きな書店に行って、文春文庫になっている原作を購入した。
ページを開く、「ドアを開けると黄色の空が広がっていた。雲ひとつないが太陽も見当たらない。」えっええっえ!黄色の空って、どんな空なんだろうか。
秋薊
秋薊峰よりも蝶の荒々し(滝春一)
9月25日日曜日、台風一過で朝から洗濯日和だった。9月2日に孫娘がスペインに帰ってから、気が抜けてしまっていた。
孫娘が使っていたタオルケットとシーツを洗濯して、青空に干した。青空に向かって深呼吸した。
歩いてから5分のところにある自然園に出かけた。「65歳以上は無料」。
自然園には、おひとり様の65歳以上のおじいさんとおばあさんがあっちこっちに。
都会の一等地での散策は超贅沢。木々に囲まれて心がまったりゆったり、ありがたいことだ。
あざみの歌のあのメロディーが、浮かんできた。そこで、ネットで調べてみると、あの歌は1949年にNHkラジオ歌謡で発表された日本の歌謡曲だ。ということは、私が1950年生まれだから73年前にできた歌だ。
山には山の愁いあり 海には海の悲しみや ましてこころの花園に 咲きしあざみの花ならば
高根の百合のそれよりも 秘めたる夢をひとすじに くれない燃ゆるその姿 あざみに深き わが想い
いとしき花よ汝はあざみ こころの花よ汝はあざみ さだめの径は涯てなくも かおれよせめてわが胸に
昔の歌謡曲は深い。
戻橋
上品で優美な娘は実は鬼だった。
私の尊敬する税理士の先生は実は女流舞踏家だった。半蔵門にある国立劇場大劇場に、久しぶりに友人を誘って行ってきた。12時に、半蔵門にある友人のレストラン「アルゴ」で、美味しいフレンチをいただいてから「推薦名流舞踏大会の戻り橋」のお舞台見物に。
鬼が現れ人を食い殺すと噂の京都の一条戻橋で、鬼退治で有名な武将が戻り橋で鬼女と出逢い、その腕を切り落とした伝説を元にした作品。
普段は、バリバリと税理士の仕事をする先生が、艶っぽい姿で優美な舞を披露。色仕掛けで、イケメン武将をたぶらかせようとする姿に。「えっえっ!」思わず、膝を乗り出してしまった。
舞台は一転、舞台の最前列に席どった私の前に、紋付袴のイケメン二人が三味線の伴奏で「常磐津」を。
娘が鬼に。鬼は武将を引っつかみ空中に飛び去ろうとする。武将は鬼の腕を切り落として北野天満宮の屋根へ落ち、鬼女は片腕を失ったまま雲間に飛び去って行った。
片腕を失っても、鬼女は凛として生きていく。
翌日、鬼女が、私の事務所に。「先生!右腕ありますよね~!」ああ~~良かった。
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